精神疾患は高い自殺率や経済・社会的損失を伴う重篤な疾患で、病因や病態が不明のため根治薬や客観的な診断法は確立していません。20162月に新設された当講座では、精神疾患患者死後脳試料を用いたエピジェネティクス研究、また体細胞変異研究など、神経細胞ゲノムの修飾や多型性といったゲノムの動的側面に着目した研究を行い、精神神経疾患の病因・病態を明らかにしていきます。


特に最近、統合失調症患者神経細胞において、トランスポゾンLINE-1のゲノムコピー数の上昇が認められること、上昇の背景として遺伝要因と共に環境要因である妊娠期のウイルス感染の可能性があることを明らかにしました(Bundo et al., Neuron 2014)。そこで、患者死後脳における新規トランスポゾン挿入パターンを単一神経細胞レベルで明らかにしていくとともに、妊娠期母胎環境がいかに子の脳神経系ゲノムの動的側面に作用し精神機能に影響を与えるのか、その詳細な分子メカニズムを動物モデルを用いて明らかにしていきます。

 

また、血液や唾液試料などを用いた精神疾患の生物学的診断のためのバイオマーカーの確立を目指します。現在までにセロトニントランスポーターやBDNF遺伝子など主要な候補遺伝子のDNAメチル化状態や、エピゲノム関連代謝産物の異常を同定しています。既に同定済みのバイオマーカ―候補について実用化に向けての研究開発を進めていくと共に、脳神経系ゲノムの解析から得られた知見を反映させた解析を進めていきます。

   主な研究テーマ

   1. 脳神経系ゲノム・エピゲノム解析による精神神経疾患の病因・病態研究

      ・脳ゲノム解析による精神疾患研究(新学術領域ニュースレター「精神疾患研究の今」より、pdf

      ・LINE-1と統合失調症(岩波書店「科学」より、pdf
   2. 脳神経系ゲノム・エピゲノム解析のための新規解析技術の開発

        ・脳神経系組織からの神経細胞核分画法 (Bundo et al., Neuromethods, 2016, web)

        ・単離神経細胞核でのLINE-1定量法 (Bundo et al., Neuromethods, 2017, web)

        ・マウスLINE-1のDNAメチル化解析法 (Murata et al., Scientific Reports, 2017, web)

      ・コモンマーモセットのDNAメチル化解析 (Ueda, Murata et al., Neuroscience Research, 2017, web)
   3. モデル動物を利用した脳神経系における転移因子の機能解析
   4.
末梢試料解析による精神神経疾患のバイオマーカー開発​